
曼荼羅とは、目に見えない秩序や関係性を可視化するための造形です。
その起源は古代インドにあり、世界や存在の構造をひとつの「かたち」として表現する試みから生まれました。
そこでは、多様な要素が中心に向かって配置され、全体として一つの統合された世界を構成します。
個と全体、内面と外界が響き合う構造として、曼荼羅は機能します。
鑑賞者がその構造を辿り、あるいは内側へと意識を向けていくとき、それは単なる視覚体験を超え、自身の感覚や認識と向き合うプロセスへと変化していきます。
なお、構成要素の配置や位置関係は固定的な意味や価値に依存するものではなく、どの位置においても等しく全体と関わるものとして設計されています。

当作品は、観音菩薩を表現した立体曼荼羅です。
アクリルペインティングを基調とし、祈りや救済といった宗教的概念を起点に、それらを現代的な造形として再構築しています。
中心構造には、理趣経に基づく象徴体系を取り入れ、17の構成要素によって秩序と均衡を可視化しました。
「煩悩即菩提」という思想を背景に、人間の内面にある揺らぎや欲求を否定するのではなく、エネルギーとして捉え直しています。
円環構造と中心に配置されたフォルムは、視覚的な集中と感覚の深化を促し、鑑賞者の内的リズムや意識の流れに作用します。
本作は単なる造形ではなく、空間と身体の関係性に介入する装置としても機能します。
鑑賞者がこの曼荼羅の前に立つとき、多層的なイメージの広がりを通して、内側にある宇宙のような感覚に触れる体験が立ち上がります。
本作は、洲本市宝林寺において、檀家様のための祈りの場として制作されました。